『知っておきたい子育てのウソ・ホント50』
『知っておきたい子育てのウソ・ホント50』小西行郎
科学的な根拠を加えていろいろな疑問に答えていて、とても参考になった。
最近よく思うのは、きっと子育てに「正解」はないということ。
出産も子育ても、結果がすべて。
無事に生まれれば、無事に成長すれば「~しても大丈夫だった」と言うだろうけど
ほんの些細なことで何か問題になれば「~は危ない」と思うだろう。
だから多くのことはすべて鵜呑みにせず、ほどほどに実践して
「こうするとこうなることが多い」程度に考えたほうがいいと思う。
本を読んで、へーと思ったことをメモ。
◎教育方針について◎
母親と父親、祖父母で意見が違うのは当たり前。
子どもは混乱するかもしれないが、混乱していい。
どちらが正しいのか、迷い、混乱することで子どもは考え、
人によって違うということを学ぶ。
◎赤ちゃんの実験◎
新生児の枕もとに、お母さんの母乳を染み込ませたガーゼと、
別の人の母乳を染み込ませたガーゼを置くと
どの赤ちゃんも例外なく、自分のお母さんの母乳のほうに顔を向ける。
哺乳瓶の乳首も、いくつか並べると吸わせていたものに顔を向ける。
◎二ヶ月革命、九ヶ月革命◎
生後二ヶ月頃に胎児期から続いていた運動やしぐさの多くが見られなくなる。
本当の意味で胎児期と訣別するので「二ヶ月革命」と言われる。
次の大きな変化の節目は「九ヶ月革命」。
脳の視覚野のシナプスの数が最大になり、この後シナプスは減っていく。
この頃、視覚の機能ががらりと変わる。
「共同注意」といって、相手の視線を追って、
自分も相手の見ているものを見ることができるようになる。
また、「短期記憶」も始まり、
たとえば、右手に乗せた小さなおもちゃを赤ちゃんに見せてぱっと隠すと、
おもちゃがあったことを記憶しているので右手をこじ開けようとするようになる。
こうして環境からの刺激をたくさん受けて、
後天的な能力がどんどん伸びていくのが九ヶ月以降。
◎テレビについて◎
テレビを、親との接触を大きく上回るほど長時間見続けると、
言葉や感覚を司る脳の分野に、画像処理のための能力が侵入して、
言葉や感覚機能の発達を邪魔しながら特異的に発達する可能性がある。
言葉が話せなかったり、自分のことでも他人のことのように話すようになることの
原因になり得るため「赤ちゃん番組だから」と思わず、気をつける。
◎おもちゃについて◎
おもちゃには一つの表情しかない。そういう者をいくつも与えるより、
もっと複雑で多様な刺激を一つ与えるほうがいい。それが人間。
単純なおもちゃで親があやしたり、本を読んでいろいろな表情を見せるのがいい。
◎早期教育について◎
ある能力を身につけるには、何歳までにやらなければいけないという
「臨界期」、「感受性期」というものがあるらしい。
語学 0~9歳
視力 0~2歳
運動能力 0~4歳
音感 3~9歳
数学、論理的思考 1~4歳
しかし、左脳にダメージを受けて完全に言葉を失った大人が、
右脳の働きによってまた言葉を話すようになることがあるように、
できあがった大人の脳でもリターンマッチが可能。
過剰な早期教育は、限られた時間と限界ある脳に大きな負担をかける。
バランスのとれた心身の成長を妨げることにつながる可能性がある。
また、「この子がやりたがるから」と言って半分逃げて強制するのはいけない。
子どもが何をしたいのか判断できない時期に親の思いで強いてはいけない。
子どもの能力も時間も限られているので、
保険のつもりでいくつも習い事をさせるのではなく、
子どもが自分で工夫しながら遊べるようにする。
いいものだけを与えよう、いいことだけをさせようとせず、
よくないこと、悪いことも雑多に与え、逃げ場を残してあげる。
よくないものは親が嫌な顔をすれば、「これは悪いな」と子どもにもわかる。
◎夜泣きについて◎
子どもの成長は、坂道を一歩一歩同じペースで上っていくような単調なものではない。
平坦な道をゆっくり進んでいたかと思うと、突然階段を二、三段飛び越えることもある。
自分の意志を自由に伝えられなかったりという欲求不満の現れが夜泣きではないか。
赤ちゃんの成長は火山の爆発のようなもの。
夜泣きという爆発の後に、成長の一段階がすむとしばらく落ち着き、
また少したつと次なる欲求が芽生えて不満がたまり、また爆発して大きく成長する。
結局は夜泣きにあれこれ悩まず、そのあとにどんな成長を見せてくれるか楽しみにして
じっと我慢して嵐がすぎるのを待つしかない。
◎言葉について◎
子どもが言葉を覚えるのが遅いと、周囲の人たちは
「お母さんが子どもに話しかけないから」と母親を責めるが、これは間違い。
言葉が遅い子が最初に口にするのは「イヤ」「ダメ」というような否定的な言葉。
無理に子どもに言わせようとせず、子どもの要求を引き出してやること。
おもちゃを手に乗せ、赤ちゃんが興味を示して手を伸ばしてきたら
さっと手を握っておもちゃを隠す。すると赤ちゃんは手をこじ開けようとする。
これを何度もくり返すと赤ちゃんは親の顔をのぞきこんで
「ちょうだい」と訴えるような顔をする。
このように欲求不満にさせることで子どもは自ら親に要求する術を学ぶ。
◎性格について◎
性格形成に遺伝子が関与する割合は50%、
親・友人などの人間関係、病気などの物理的な環境が30~35%、
母子関係は10%にすぎない。
◎横の広がり◎
成長・発達の段階は上にいくことだけではなく横の広がりがある。
生まれた時から寝たきりの子どもが、チューブで栄養を摂っていたのが
医師に流動食を口まで運んでもらって飲み込めるようになった。
もし「発達」を上へ上へ伸びることだとしたら、
その子は自分の手で食べられるようになるため、まだまだ訓練や工夫がいる。
しかし、担当の医師は違う考えだった。
「今度はお母さんに食べさせてもらえるようになる。次はお父さんかな。
そうなると相手によって会話の内容も変わるだろう。
人との関わりの中で食事ができるようになったんだ。ものすごい進歩じゃないか」
「人に食べさせてもらう」ことには変わりはないので発展段階としては同じレベルにある。
けれども、木が枝を広げ、花を咲かせるように、
この子の人生も人と関わることで縦へ横へと広がっていく。
知能指数でも経済的価値でも社会的地位でも測れない、
子どもの「発達の広がり」というものを肌で感じることができるのは親しかいない。